ギランバレー症候群とは
1916年,ギラン(G. Guillain),バレー (J. A. Barre)らによって初めて報告されたアレルギー性急 性多発性根神経炎です。急性炎症性脱髄性多発神経根炎(AIDP)とも言われており、筋肉を動かす運動神経が傷害されて、両手両足に力が入らなくなる病気です。あらゆる年代に発症しますが、20〜30代、60〜70代に発症者が多いと言われています。ギラン・バレー症候群は稀な病気であり、年間の発病率は10万人当たり1〜2人程度とされます。約60%の患者さんが、発病の1〜2週前に風邪をひいたり下痢などの症状がでて、足の裏の異常感覚などを生じ,数日から数週のうちに手や足が麻痺します。手足の麻痺の程度は発病してから10日〜2週以内にもっとも酷くなり、重症の場合には呼吸もできなくなります。手や足の先が痺れたり、感覚が鈍くなったり、筋肉の萎縮や筋力の低下が出始めます。これらの症状は、手足の末端からしだいに全身に広がります。
ギラン・バレー症候群は、急速に筋力が低下する急性型と筋力低下が徐々に起こる慢性型の2つのタイプに分かれます。現在のところ、はっきりとした原因はわかっていませんが、風邪をひいたり下痢をしたりした際に、血液中にできる「抗体」が誤って自分の運動神経を攻撃するような「自己抗体」ができ、その「自己抗体」が運動神経の機能を障害して手足の筋肉が動かなくなる、という機序が明らかにされつつあります。症状のきわめて重い人でも通常は自然に治癒しますし、予後は比較的良好で、30%の人は一年以内に完全回復するようです。ただし完全回復したと思われても、持久力の低下が見られる人が多いようです。
ギランバレー症候群の治療法
急性型のギラン・バレー症候群は、急速に悪化するために緊急治療が必要で、ただちに入院して治療を受ける必要があります。適切な治療を開始するのが早いほど、良好な治療結果が期待できます。また、関節と筋肉の機能を維持するため、理学療法がただちに開始されます。ギラン・バレー症候群の治療法としては、以下のような方法があります。
- 「免疫グロブリン療法」
- 免疫グロブリンを大量投与します。機能予後の改善のため、現在では早期から投与することが推奨されています。免疫グロブリンとは抗体のことで、リンパ球でつくられ、主に異物が侵入してくるのをふせぐ働きをするタンパク質分子です。
- 「血漿交換」
- 血液中の有毒物質をフィルターで取り除きます。 ※日本の健康保険の範囲内で治療を受けられるのは現在、単純血漿交換療法だけです。これらの治療法以外にステロイドがありますが、ステロイドは有効性が証明されておらず、病気を悪化させることもあるため、現在では使用されていません。また、5〜10%の人は、呼吸をコントロールしている筋肉が非常に弱くなるため、人工呼吸器が必要になります。租借するための筋肉も筋力低下が起こることがある、約10%の人は静脈栄養や腹壁を通して胃に栄養を送るチューブが必要になります。